ビジネスにおいて、マーケティング戦略の立案は必要不可欠です。行動に移す前に戦略を具体的にして、どのようなゴールを目指すのか方向性を定めておく必要があります。決めるべき内容は多くありますが、どのようにマーケティング戦略を立案すればいいのでしょうか。
本記事では、マーケティング戦略の概要と重要性、立案方法や代表的なフレームワークについて解説します。マーケティング戦略をどのように作ればいいかわからない、成功事例を知りたいという人は、ぜひ参考にしてください。
マーケティング戦略とは、自社がどのようにマーケティング活動を行っていくかという方向性を定めることです。マーケティング活動を行う上で必要な計画と言い換えることもできます。
そもそも、マーケティングとは何なのでしょうか。近代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーは、マーケティングを以下のように定義しています。
どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること |
(引用:コトラーのマーケティング講義)
マーケティングはどのようにアプローチすればターゲット市場のニーズを満たせるか、その価値を生み出せるのかという内容を検討することです。マーケティングと混同しないように注意が必要です。
マーケティング戦略が重視されている背景には、次のような理由があります。
物資の充実や情報の速達性などが向上し、消費者の購買行動は以前よりも多様化している状況です。従来のマーケティング戦略といえば、経験者が長年培ってきた勘やセンスに頼って行われていました。しかし、それだけでは対応できなくなり、データ分析に基づいたマーケティング活動が重視されるようになったのです。
また、以前よりも社会情勢や消費者のニーズの移り変わりが早くなったのも、マーケティング戦略が重視されることになった背景のひとつです。加えて、日本国内で言えば少子高齢化問題など、労働人口の減少が叫ばれている状況にあります。
このような状況下で、効率的に企業の売上向上に貢献し、かつ消費者のニーズを満たすためにはターゲット戦略が必要と言われるようになったのです。従来の経験や勘に基づくマーケティングではなく、取得したデータや数字を用いた分析によるマーケティングにスポットが当たるようになりました。
マーケティング戦略を立案するには、次の内容を分析しなければなりません。
上記に記した順番で分析を行うのが一般的です。具体的にどのようなことを分析するのか、各章で詳しく解説します。
最初に行うのは、企業内部の環境と辞表を取り巻く外部環境の分析です。この2つは同時進行で分析しても良いかもしれませんが、別々に分析しても問題はありません。分析する内容については企業や業種によって異なりますが、主に次の内容で分析を行いましょう。
内部環境 | 外部環境 |
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これらの状況を分析することで、効率的な戦略立案が可能になります。あくまで一例であるため、該当する分析すべき内容があれば分析を実施してください。
分析結果をもとに、顧客をセグメンテーションしたりターゲティングしたりします。
セグメンテーションとは、属性ごとで顧客を分類することです。セグメンテーションを実施することで、自社がアプローチできていない領域の顧客や、市場的に未開拓な領域が発見できるかもしれません。
ターゲティングとは、マーケティングの対象となる顧客を明確にすることです。セグメンテーションとよく似ていますが、こちらは具体的な商材のターゲットを指します。ターゲティングができていないと、市場でどの層にアプローチすればいいかがわからなくなってしまうため、マーケティング戦略の軸が決まりません。
セグメンテーションとターゲティングは、マーケティング戦略の軸となる重要な部分です。特にターゲティングは、自社の理想顧客を表す指標ともなるため、詳細に設定しておくといいでしょう。
バリュープロポジションとは、自社が顧客に提供する価値のことです。自社が提供する商材やサービスの品質や価格、利便性が、どのようなメリットを顧客にもたらすのかを明確にします。
消費者はメリットのない商品を購入することはありません。自社が販売したい商品が、顧客にどのようなメリットをもたらすのか、競合他社の商材と差別化できるポイントはどこなのかを明確にする必要があります。
バリュープロポジションを明確にした成功事例は多くあります。例えばユニクロは、競合他社が進出していなかった領域に高付加価値商品を開発して展開する「差別化戦略」で成功を納めました。バリュープロポジションを明確にすることで、競合他社にはない強みを発見できる可能性もあるため、きちんと明確化するようにしましょう。
マーケティングミックスとは、マーケティングの実行戦略のことです。ここまで考えてきた内容に加えて、後述する4Pあるいは4Cの考え方を加えて、矛盾がないように市場のニーズと各要素を整える必要があります。
失敗する典型的な例としてあげられるのが価格設定です。10代や20代向けの商品に対して高価格の設定をしても、その商品に手を伸ばす消費者は少ないでしょう。これらの矛盾を解消することがマーケティングミックスです。
ここまで立案して、いよいよ実行に移ります。分析や検討などで時間がかかるものの、マーケティング戦略は自社の商品やサービスを多くの人に届けるために必要なマーケティングの軸です。時間がかかっても、しっかりとした軸を作るようにしましょう。
マーケティング戦略の立案に応用できるフレームワークには、非常に多くの種類があります。フレームワークとは、特定の意思決定や分析、問題解決をする際に使う思考の枠組みのことを指します。マーケティングでもフレームワークは対応されますが、マーケティング戦略を立案する際には次のようなフレームワークが使われるのが一般的です。
それぞれ特徴ややり方が異なります。詳しく内容を見てみましょう。
4P分析とは、以下の4つの要素から成り立つマーケティングのフレームワークです。
自社の商材をメインで考えてマーケティング方法を考える手法で、マーケティング戦略の中でもオーソドックスな部類に入ります。
STP分析とは、自社の立ち位置や競合他社との差別化ポイントを探してマーケティング戦略を立案するフレームワークです。STPの意味はそれぞれ以下の通りです。
市場を細分化してターゲット像を設計し、自社の立ち位置を明確化するというのが一連の流れになります。STP分析をうまく活用すると、競合他社を含めて未開拓の領域が見つかる場合があります。その領域を差別化ポイントとすることで、市場の一部を独占できるかもしれません。
PEST分析とは、主に企業の外部環境に目線を置いたマーケティング戦略のフレームワークです。それぞれ以下の英語の頭文字を取って、この名が付けられています。
自社が置かれている状況を明確するのに非常に有効な手段です。ただし、内部環境の分析はできないため置かれている状況を把握するために用いることがほとんどです。
3C分析とは、自社の内部環境と外部環境を同時に分析できるフレームワークです。3Cはそれぞれ以下の頭文字を表しています。
マーケティング戦略の立案に必要な市場理解と自社の状況把握、他社の動向を分析するのに最適なフレームワークです。ここからさらに細かな分析を進めることで、効果の高い戦略を立案できる可能性が高まります。
ファイブフォース分析とは、自社の視点で見た際に脅威となり得る要因の関係性がどこにあるのかを理解するためのフレームワークです。5つの脅威とは次のものを指しています。
イメージとしては全ての脅威が自社に向いているという形です。全てが独立しているケースは珍しく、何らかの形で関わりを持っている場合がほとんどになるため、それらの関係がどのように組み合わせることで自社にダメージを与えるのか分析をする際に用いられます。
SWOT分析は、自社のポジティブな要素とネガティブな要素を明らかにするマーケティング戦略のフレームワークです。内容はそれぞれ次の通りです。
ただ単にポジティブな要素とネガティブな要素を洗い出すだけでは、マーケティング戦略には活かせません。自社の置かれている状況を把握するのはもちろん、洗い出した4つの要素をどのように活かしてマーケティングを行うのか、具体的に考えることができます。
バリューチェーン分析とは、自社の商品が顧客の手に届くまでの一連の流れで、価値が連鎖していく過程を考える分析のことを言います。ここで言う価値は値段的なものではなく、顧客にとっての付加価値の意味です。
価値を検討することで、自社の強みや競合他社と差別化できるポイントを明確にできるでしょう。また、原材料の調達から販売までの一連の流れに関与している企業であれば、自社以外の要素を含めてバリューチェーン分析を行うとさらなる差別化ポイントが発見できるかもしれません。
VRIO分析とは、自社の商品やサービスを次の4つの観点から分析するフレームワークです。
自社商品が提供できている価値は何か、希少性はあるかなどを考えます。4つの視点から分析を行うことで、今まで気づかなかった自社製品の強みや課題を発見できるかもしれません。
PPM分析とは、自社の商品・サービスや事業を次の4つの観点で分析するフレームワークです。
これらは市場成長率と市場占有率の視点で分けられている項目です。自社の商品やサービス、事業がどの受賞に当てはまるのかを検討して分析します。この結果自社の課題が何なのか、そしてリソース分配が正しくできているかが確認できるのです。
マーケティング戦略を徹底的に行ったことで、大きな成功を収めた企業がいくつも存在しています。本記事では3つの企業の成功事例を紹介します。
プライベートジムを運営するRIZAP株式会社は、ダイエットの継続が難しく失敗する人が多い点に着目し、どのようなターゲットに利用して欲しいかのマーケティング戦略を実施しました。
その結果差別化のポイントとして、マンツーマンでパーソナルトレーニングと食事指導を行うことで、ダイエットの成功率が高められる点に着目。「結果にコミットする」というキャッチフレーズで大きな成功を収めました。
RIZAPが登場した当時、すでに多くのダイエットビジネスが存在していました。しかし、RIZAPが差別化ポイントとして掲げた要素は当時まだ存在しておらず、実際に短期間で結果を出したことから、ダイエットビジネスの中でも確固たるポジションを獲得できたのです。
日本初のオンライン専門の生命保険会社であるライフネット生命は、生命保険においてよく言われる仕組みの複雑さや保険料の高さ、加入や請求手続きのめんどくささをマーケティング戦略で見つけ出し、これらに対抗する差別化ポイントを決定しました。
保険料を抑えるために情報提供も全てネット経由にし、申し込みも全てネットを活用することになります。さらにプロモーションもWebやSNS中心で行ったことで、利便性の高さや申し込みのしやすさをPRしました。
その結果、契約件数40万件を突破し、現在も右肩上がりで成長を続けています。面白いのは顧客層で、生命保険の加入をめんどくさがっている層が多い20代から40代の子育て世代が8割を占めているのです。
サブスク型高級ブランドバックのレンタル事業を展開しているLaxusは、STP分析と4P分析を行い、マーケティング戦略を立案しました。
分析の結果によると、20~40代半ばの女性は、ラグジュアリーブランドのバッグを使用する価値を認めてはいるものの、そこまで所有することにこだわりのない人が多いことが分かりました。つまり購入してまで所有したいという層はこの年代は少ないという結果が分かり、サブスクリプションとして高級ブランドバッグのレンタル事業を開始したのです。
この分析結果は大当たりし、当初想定していたターゲットを中心として多くの利用者を獲得しました。また使いやすいような仕組みづくりも徹底しており、今後も成長が期待される企業の事例と言えるでしょう。
Prelude Links(プレリュードリンクス)は事業戦略からマーケティングプランの設計、戦術実行の支援まで、上流から一手に対応が可能な支援事業者です。
Prelude Links(プレリュードリンクス) Webサイトより情報抜粋
1. 事業戦略・マーケティングプランの設計:専門人材による上流設計で事業全体の数値を可視化し、予実管理を可能にします。事業戦略に紐づいた財務計画、人員計画、獲得計画を設計することで、必要なタイミングで必要な行動を実行できます。
2. 獲得チャネルの一元管理:セールスチームとマーケティングチームを徹底的に管理・マネジメントします。特に多くのベンダーを使うマーケティングチームでは、KPI予実管理、ベンダーマネジメント、業務効率化などを徹底し、経営者の負担を軽減します。
3. プロフェッショナル人材によるチーム組成:各分野で成果をあげたプロフェッショナル人材がチームメンバーとして在籍しています。必要なタイミングで必要な人材を必要な分活用することで、事業成長を加速させます。
これらの3つのポイントを組み合わせることで、事業戦略の策定から実行までを効率的に進め、事業成長を加速させることができます。
マーケティング戦略を成功させるには、自社の事業や商品・サービスのこと、そしてそれらを取り巻く環境を冷静に分析することが重要です。市場は複雑化し、顧客のニーズは細分化していく一方で、企業は明確にターゲットを見極めて自社ならではの強みを伸ばす戦略を実行する必要があります。
マーケティング戦略の立案には時間がかかるかもしれませんが、優れたマーケティング戦略ができれば、予想以上の事業の成長が見込まれるかもしれません。冷静に分析を行い、客観的に自社や商品を見つめ直して、商品やサービスが最大限に生きるマーケティング戦略は何なのかを検討しましょう。
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